各時代の大争闘

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欺瞞の張本人

長い間その熟達した能力を欺瞞の働きに注いできた暗黒の君は、あらゆる階層、あらゆる状況の人々に、彼の誘惑を巧妙に当てはめる。彼は、教養のある上品な人々に向かっては、心霊術をいっそう洗練された知的なものとして示す。こうして彼は、多くの人々を自分のわなに引き込むことに成功する。心霊術が与える知恵は、使徒ヤコブが「上から下ってきたものではなくて、地につくもの、肉に属するもの、悪魔的なもの」と述べたものである(ヤコブ3章15節)。しかし大欺瞞者サタンは、隠すことが最もよく彼の目的にかなう時には、このことを隠すのである。荒野の試みの時、キリストの前に天の使いの輝きを装ってあらわれることができたサタンは、人々の前に光の天使として最も魅惑的な様子をもって来る。彼は高尚なテーマを示すことによって理性に訴える。また彼は、うっとりさせるような光景をもって空想力を楽しませる。また愛と慈悲とを雄弁に描いて愛情を呼び起こす。彼は人々の空想を高く飛躍させ、人々が自分たちの知恵に大きな誇りを持つように導き、そしてついには心の中で永遠なるお方を軽蔑するようにさせる。世の救い主を非常に高い山に連れて行き、そのお方の前に地上のすべての国々とその栄華を示すことができたこの力ある者は、神の力によって守られていないすべての者の感覚を誤らせるような方法で、人々に誘惑を仕掛けるのである。 GCJap 641.1

サタンは、エデンでエバを欺いたように、へつらったり、禁じられた知識への欲望をかき立てたり、自己を高める野心を起こさせたりして、今も人々を欺くのである。彼が堕落したのは、こうした悪を心に抱いたためであった。そして、彼は、これらによって、人類を破滅させようとしている。「あなたがた(は)……神のように善悪を知る者となる」と彼は言った(創世記3章5節)。心霊術は、「人間は進歩する生物である。人間はその誕生の時から、永遠に向かい神に向かって進歩するように運命づけられている」と教える。また、「心を判断する者は、各人の心それ自身であって、他の何者でもない」「その判断は正しい。なぜならば、それは自己の判断だからである。……王座は、あなたの内にある」とも言う。ある心霊術の教師は、彼のうちに「霊的意識」が起きた時に、「同胞よ、すべての者は、堕落しない半神半人であった」と言った。また他の者は、「正しく完全な人間は、だれでもキリストである」と言っている。 GCJap 642.1

こうしてサタンは、崇敬の真の対象である無限の神の義と完全、また、人間の到達すべき真の標準である神の律法の完全な義の代わりに、罪深く誤りやすい人間自身を、崇敬の唯一の対象とし、判断の唯一の規準、品性の標準とした。これは、進歩ではなくて、退歩である。 GCJap 642.2

眺めることによって変化するということは、知的方面においても霊的方面においても一つの法則である。心は、いつも考えていることに次第に順応するものである。それは、日ごろから愛し尊敬しているものに、同化していくのである。人は、自分が立てた純潔、善良、または真理の標準よりも高きに達することは決してない。もし自分が最高の理想であれば、それ以上の高尚なものに到達することは決してできない。いや、かえって常に下へ下へと落ちていくのである。ただ神の恵みだけが、人間を高める力を持っている。人間は、そのままにしておけば、必然的に堕落していくのである。 GCJap 642.3