各時代の大争闘

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キリスト者の奇跡的な脱出

エルサレムが滅亡した時、キリスト者は一人も死ななかった。キリストが弟子たちに警告を発しておられ たので、彼のみ言葉を信じた者は、みな、約束のしるしに注意していた。「エルサレムが軍隊に包囲されるのを見たならば、そのときは、その滅亡が近づいたとさとりなさい。そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。市中にいる者は、そこから出て行くがよい」とイエスは言われた(ルカ21章20、21節)。ローマ軍は、ケスティウスの指揮のもとに都を包囲したが、すべてが即時攻撃に好都合であると思われたにもかかわらず、不意に撤退してしまった。 GCJap 35.4

籠城していた側では包囲に耐えかねて、今にも降伏するばかりになっていた時に、ローマの将軍は、一見、なんの理由もないのに、軍隊を撤退させたのである。しかしこれは、神が神の民のために事件のなりゆきを導かれる憐れみに満ちた摂理であった。すでに約束のしるしは、待っているキリスト者に与えられていた。そして、今、救い主の警告に従おうとするすべての者に機会が与えられた。事件は、神の支配下にあったので、ユダヤ人もローマ人も、キリスト者の避難を止めなかった。ケスティウスの退却を見たユダヤ人は、エルサレムを飛び出して敵軍のあとを追った。両軍の交戦中に、キリスト者は都を去ることができた。この時、彼らの避難の妨害になったかもしれない敵の軍勢も、国内から追い払われていた。包囲された時、ユダヤ人は仮庵の祭りを祝うためにエルサレムに集まっていた。したがって全国のキリスト者は、無事逃れることができた。彼らは直ちに安全な場所へ、ヨルダンの向こうにあるペレアの地のペラの町に避難した。 GCJap 36.1

ケスティウスとその軍隊を追跡したユダヤ軍は、これを全滅させるかと思われる勢いで後方から攻めたてた。ローマ軍は、非常な困難の中でやっと退却した。ユダヤ軍は、ほとんど損失をこうむらずにすみ、戦利品を携えて、意気揚々とエルサレムに引きあげた。しかし、この勝利と思われたことは、ただ彼らを不幸にしただけであった。これは、ローマ人に対する頑強な 抵抗心を彼らにいだかせ、滅亡にひんした都を言語に絶する苦難に陥れた。 GCJap 36.2