各時代の大争闘
ティトゥスの再攻撃とエルサレムの惨状
ティトゥスがふたたび包囲した時、エルサレムに起こった災難は悲惨なものであった。都の包囲は、城内に幾百万のユダヤ人が集まっていた過越の祭りの時に起こった。注意深く保存すれば、数年は住民を養うことができたはずの食糧の蓄えは、相争う党派の嫉妬や復讐のためにすでになくなり、人々は、今や飢餓の恐怖にさらされていた。 GCJap 37.1
小麦一升の価は一タラントであった。人々は、非常な飢えのために、帯皮やサンダル、また盾のおおいをかんだりした。多くの者は、夜間城外に忍び出て、城壁の外に生えている野草を取ろうとしたが、その多くは捕らえられて惨殺された。また、無事帰ってきた者も、非常な危険を冒して集めたものを他の人に奪われてしまうのであった。権力者が、窮乏に陥った者から、隠しているわずかの食物を奪い取るために加えた拷問は、実に残忍なものであった。こうした残忍なことは、十分に食物を持っていながら、ただ将来のために蓄えておこうとする人々によって、しばしば行われたのであった。 GCJap 37.2
無数の者が、飢えと病気で倒れた。人間本来の自然な愛情は失われてしまったように思われた。夫は妻から、妻は夫から奪った。子供は、老いた親の口から食物をもぎ取った。「女がその乳のみ子を忘れて、その腹の子を、あわれまないようなことがあろうか」という預言者の問いに対して、滅亡にひんした城内から次のような答えがあった。「わが民の娘の滅びる時には情深い女たちさえも、手ずから自分の子どもを煮て、それを食物とした」(イザヤ書49章15節、哀歌4章10節)。また、それより一四〇〇年前に与えられた警告 の預言が成就した。「またあなたがたのうちのやさしい、柔和な女、すなわち柔和で、やさしく、足の裏を土に付けようともしない者でも、自分のふところの夫や、むすこ、娘にもかくして、……自分の産む子をひそかに食べるであろう。敵があなたの町々を囲み、激しく攻めなやまして、すべての物が欠乏するからである」(申命記28章56、57節)。 GCJap 37.3