各時代の大争闘
サタンの支配
エルサレムに対する神の忍耐は、ただユダヤ人をかたくなな不信に陥れるだけであった。彼らは、イエスの弟子たちを憎み、虐待して、最後の憐れみの招きを拒んでしまった。その時、神は、彼らから保護の手を引き、サタンとその使いたちに対する神の抑制力を除去された。そして国家は、その選んだ指導者のなすままになった。 GCJap 33.2
イスラエルの人々は、邪悪な衝動をしずめる力を彼らに与えることのできるキリストの恵みを、退けてしまった。そこで、今度は、こうした衝動が優位を占め た。サタンは、人間の心の中の最も激烈で卑しい感情を呼び起こした。人々は、道理をわきまえなかった。彼らは理性を越えた衝動と盲目的な激しい怒りに支配された。彼らは、悪魔的残酷さをあらわしてきた。家庭においても国家においても、上流階級においても下層階級においても一様に、疑い、ねたみ、憎しみ、争闘、反逆、殺人などが行われた。どこも安全ではなかった。友人も親族も、互いに裏切り合った。親は子供を殺し、子供は親を殺した。国民の指導者たちは、自分自身を統御する力がなかった。抑えきれない感情が彼らを暴君にした。ユダヤ人は、神の罪なきみ子を罪に定めるために、偽証を受け入れたのであった。そして今、偽証が、彼ら自身の生命を脅かしていた。彼らは、その行動によって、長い間、「われらが前にイスラエルの聖者をあらしむるなかれ」と言ってきた(イザヤ書30章11節、文語訳)。今、彼らの願いはかなえられた。彼らはもう神を恐れなくなった。サタンが、国家の頭となった。そして政治と宗教の最高の権威者たちは、彼の支配下にあった。 GCJap 33.3
対立する諸党派の指導者たちは、時には結束して、哀れな犠牲者たちを襲って苦しめるかと思うと、今度は互いに攻め合い無慈悲に殺害し合った。神聖な神殿でさえ、彼らの恐ろしい残忍さをとどめることができなかった。礼拝者が祭壇の前で殺され、聖所は死体によって汚された。しかし、この凶悪な行為の扇動者たちは、その盲目で神をないがしろにした思い上がりから、エルサレムは神ご自身の都であるから、滅亡する恐れはないと公言していた。彼らは権力を確保するために、偽預言者を買収して、ローマの軍隊が神殿を包囲している時でさえ、神の救いを待つべきであると人々に言わせた。群衆は、至高者であられる神が敵を滅ぼすために介入なさることを、最後まで信じていた。しかし、イスラエルは、神の保護を退けてしまっていたから、今、なんの防備もなかった。不幸なエルサレ ムよ。内紛に裂かれ、同志の手で殺害された子らの血が、都の通りを赤く染め、その上異邦人の軍隊が要塞を破壊し、兵士たちを殺害したのである。 GCJap 34.1
エルサレムの滅亡に関するキリストの預言はみな、文字どおり成就した。ユダヤ人は、「あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられるであろう」というキリストの警告の言葉が事実であることを、身をもって知った(マタイ7章2節)。 GCJap 35.1
災害と滅亡を予告するしるしと不思議があらわれた。真夜中に、神殿と祭壇の上に異様な光が輝いた。戦いのために戦車や勇士たちが集結するのが、日没の時雲の上に描き出された。夜間、聖所で奉仕する祭司たちは、不思議な物音に驚かされた。地が震え、「われわれはここを去ろう」と大勢の声が叫ぶのが聞こえた。二〇人がかりでも閉められないほど重く、しかも堅い敷石に深く打ち込まれた鉄のかんぬきで閉じられた東の門の扉が、だれもいないのに、夜半に開かれた。 GCJap 35.2
また、七年の間、一人の男がエルサレムの町をあちこちとめぐって、都に下る災いについて叫び続けた。彼は、昼も夜も、激しい悲しみの歌をうたった。「東からの声。西からの声。四方からの声。エルサレムを責め、神殿を責める声。新郎と新婦を責める声。全国民を責める声」。この不思議な男は投獄されて、厳しく罰せられたが、一言もつぶやきの言葉をもらさなかった。彼は、侮辱とののしりに対して、「エルサレムは、わざわいだ、わざわいだ」「エルサレムの住民はわざわいだ、わざわいだ」と答えるだけであった。彼の警告の叫びは、彼が自分の予告したその包囲の中で殺されるまでやまなかった。 GCJap 35.3