各時代の大争闘

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神を否定する国の出現

聖書を崇敬すると言いながら、それを人々の知らない言語のまましまい込んで、人々から隠しておくことがローマの政策であった。ローマの統治下において、証人たちは、「荒布を着て」預言した。しかし、もう一つの権力―─底知れぬ所からのぼって来る獣―─があらわれて、神の言葉に対して公然と戦いをいどむのであった。 GCJap 310.1

証人たちが大通りで殺され、その死体を横たえたという「大いなる都」は、エジプトに「たとえられて」いる。聖書歴史にあらわれているすべての国々の中で、エジプトほど、生きた神の存在を大胆に否定し、神の命令に抵抗した国はない。また、エジプトの王ほど、天の権威に対して、公然たる横暴な反逆を企てた王はない。モーセが主の名によって、彼に使命を伝えた時、パロは高慢に答えた。「主とはいったい何者か。わたしがその声に聞き従ってイスラエルを去らせなければならないのか。わたしは主を知らない。またイスラエルを去らせはしない」(出エジプト記5章2節)。これは無神論である。 GCJap 310.2

そして、エジプトにたとえられた国は、同様に、生きた神の要求を拒み、同じような不信と反抗の精神をあらわすのである。「大いなる都」はまた、ソドムに「たとえられて」いる。ソドムが神の律法を犯して腐敗したのは、特に放縦の点で著しかった。そこで、この聖句の記述にあてはまる国においては、この罪もまた著しい特徴となるのであった。 GCJap 310.3

預言の言葉に従うならば、一七九八年の少し前に、サタン的起源と性質をもったある種の権力が、立ち上がって聖書に戦いをいどむのであった。そして、神の二人の証人の証言がこうして沈黙させられるその国において、パロの無神論とソドムの放縦とがあらわれるのであった。 GCJap 311.1

この預言は、フランスの歴史において、最も正確に最も著しく成就した。革命のさなか、一七九三年に、「文明国に生まれて教育を受け、ヨーロッパ諸国中最も優れた国の一つを統治する権利を有する人々から成る議会が、人の心が抱く最も厳粛な真理を、声をそろえて否定し、神に対する信仰と礼拝を満場一致で放棄するのを、世界は初めて聞いたのである」 GCJap 311.2

「フランスは、宇宙の創造主に対して公然と反逆の手をあげた国として、公式の記録が残っている世界でただ一つの国である。英国、ドイツ、スペインその他の国にも、多くの神を汚す者、多くの無神論者があらわれたし、これからもあらわれるであろう。しかし、フランスは、議会の決議によって無神論を宣言し、首都の住民全体と他の地域の大群衆とが、男も女もその宣言を喜び、歌い踊ったという、世界史上唯一の国である」 GCJap 311.3

またフランスは、特にソドムで著しかった特徴をあらわした。革命の時の堕落と腐敗の状態は、平原の町々に滅亡をもたらしたものと似ていた。そして歴史家は、預言の通りに、フランスの無神論と放縦な生活をともにあげている。「宗教に影響を及ぼすこれらの法律と密接な関係があったのが、結婚を軽視した法律であった。結婚は人間が結ぶ最も神聖な契約であって、その永続が社会の統合に最も貢献するものであるにもかかわらず、これを、二人の人間が随意に結んだり解いたりできる単なる一時的な民事契約にしてしまった。 GCJap 311.4

……もし悪魔が、家庭生活の尊ぶべきもの、優雅なもの、また永続的なものを最も効果的に破壊し、それと同時に、その目的としている害毒を、世々にわたって引き続いて及ぼそうとするならば、結婚の堕落以上に効果的な手段を考え出すことはできなかったであろう。……機知に富んだことを言うことで有名な女優、ソフィ・アルノーは、フランス革命時代の結婚を、『姦淫の秘蹟』と評した」 GCJap 311.5