各時代の大争闘
イエズス会の策動
この時、改革事業に一大危機が訪れた。ジュネーブに対して法王の破門が宣言され、強国がこぞってジュネーブを威嚇した。これまでしばしば国王や皇帝を屈服させた強力な教権に、この小さい都市がどうして対抗することができようか。世界の偉大な征服者たちの軍隊に、どうして対抗できようか。 GCJap 269.4
プロテスタント主義は、全キリスト教国において、恐るべき敵に脅かされた。改革事業の最初の勝利は過ぎ、ローマはその全滅を期して新たな勢力を奮い起こした。この時、法王教の全闘士中、最も残酷で無法で強力なイエズス会が創設された。彼らは、世俗のきずなや人間関係から切り離され、人情も理性も良心もいっさいを無視して、彼らの会以外のどんな規則もきずなも認めず、ただ、その権力を伸張することだけを義務とした。 GCJap 270.1
キリストの福音は、その信者たちに、危険を冒し、苦難に耐え、寒さ、飢え、労苦、貧困にもめげず、真理の旗をかかげ、拷問も投獄も火刑も恐れない力を与えてきた。この勢力に対抗するために、イエズス会は、その会員を狂信的にさせ、同様の危険に耐えるように、またあらゆる欺瞞の武器をもって真理の力に対抗するようにさせた。彼らは、どんな犯罪を犯しても罪にならず、どんな欺瞞を行ってもかまわず、どんな偽装もわけなくできた。彼らは、一生の間貧困と質素な生活を送ることを誓ったが、その目的とするところは、富と権力の獲得であり、プロテスタント主義をくつがえし、法王至上権を復興することであった。 GCJap 270.2
彼らは、会の会員として活動する時は聖衣をまとい、牢獄や病院を訪ねて病人や貧者に奉仕し、世俗を捨てたことを公言し、よい働きをしながら巡回されたイエスの清い名を帯びていた。しかし、この潔白な外観のかげに、しばしば、極悪非道な目的が隠されていた。目的は手段を正当化するというのが、会の基本原則であった。この規定によって、虚偽、盗み、偽証、暗殺などは、教会のために役立つならば許されるだけでなく、賞賛すべきものであった。さまざまな偽装のもとに、イエズス会の会員たちは、国政にまで手を伸ばし、国王の顧問の地位について、国家の政策をまとめた。 GCJap 270.3
また、人々の様子を探るために、そのしもべとなった。彼らは、王侯、貴族の子弟のための大学を設立し、一般の国民のための学校を建てた。そして、プロテスタントの親の子供たちは、カトリックの儀式を守るように影響された。ローマ・カトリックの礼拝の華麗な様子は、心を混乱させ、想像力を眩惑し魅惑した。こうして子供たちは、彼らの父たちが苦難と血によって得た自由を売り渡してしまった。イエズス会は、ヨーロッパに急速に広がった。そして、彼らの行ったところは、どこでも法王権が勢力を回復した。 GCJap 271.1