各時代の大争闘

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改革運動の進展

ルターは、まだローマ教の誤りから部分的に改宗したにすぎなかった。しかし、聖書を法王の教書や法典と比較した時に、彼は、驚きに満たされた。「わたしは、今、法王の教書を読んでいる。そして、……法王が反キリスト自身であるのか、それとも彼の使徒であ GCJap 160.4

るのか、わたしは知らない。だがキリストは、教書の中で、はなはだしく誤り伝えられ、十字架につけられている」と彼は書いた。しかしルターは、この時はまだローマ教会の支持者であって、その教会の交わりから分離することなど考えてもいなかったのである。 GCJap 161.1

ルターの著書と教義とは、全キリスト教国に広がっていった。運動は、スイスとオランダにも広がった。彼の著書の何冊かは、フランスとスペインにも入っていった。英国では、彼の教えは生命の言葉として迎えられた。真理は、ベルギーやイタリアにも及んだ。幾千の者が、死んだような眠りから、信仰生活の喜びと希望とに目覚めつつあった。 GCJap 161.2

ルターの攻撃によって、ローマはますます激怒した。そして、彼の熱狂的な敵たちのある者、また、カトリック大学の博士たちでさえ、この反逆的修道士を殺しても罪にならないと宣言した。ある日、一人の見知らぬ人が、ピストルを外套の下に隠して、ルターに近づき、なぜこのように一人で歩いているのかを聞いた。ルターは答えて、「わたしは、神の手の中にある。神はわたしの力、わたしの盾である。人間はわたしに何をすることができようか」と言った。この言葉を聞いて、見知らぬ人は真っ青になり、天使の前から逃げるように、去っていった。 GCJap 161.3

ローマは、ルターを亡きものにしようとしていた。しかし、神が彼の防御であった。彼の教義は至るところの「民家に、修道院に……貴族の城に、大学に、そして王の宮殿に」伝えられた。そして、貴族たちは、彼の運動を支持するために立ち上がっていた。 GCJap 161.4

ちょうどこのころ、ルターはフスの著書を読み、彼自身が支持し教えていた、信仰による義という大真理が、ボヘミアの改革者によって唱えられていたことを知ったのである。 GCJap 161.5

「パウロ、アウグスティヌス、そしてわたしは、知らずしてフス派であった」とルターは言った。「真理は一世紀前に伝えられ、しかも焼かれたことに対して、神は必ず世界を裁かれるであろう」と、彼は続けた。 GCJap 161.6