各時代の大争闘

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ボヘミア人の奮起

フスの処刑は、ボヘミアに怒りと恐怖の火を点じた。全国民は、彼が司祭たちの悪意と皇帝の変節によって犠牲にされたことを感じた。彼は忠実な真理の教師であったことが宣言され、彼を死に処した会議は殺人罪に問われた。彼の教義は、今までになかったほど人の注目を引いた。法王の布告によって、ウィクリフの著書は火で焼かれていた。しかし、焼かれなかったものがその隠されたところから持ち出されて、聖書や、あるいは人々が手に入れ得た分冊と関連させながら研究された。こうして多くの人々が改革主義を受け入れるようになった。 GCJap 133.3

フスの殺害者たちは、彼の運動の勝利を手をこまねいて見てはいなかった。法王と皇帝は力を合わせてこの運動を粉砕しようとし、ジギスムントの軍隊がボヘミアに送りこまれた。 GCJap 133.4

しかし、一人の救済者があらわれた。ジシュカは、戦争が起こるとまもなく失明してしまったが、しかし当時の最もすぐれた将軍の一人で、ボヘミア人たちの指導者であった。ボヘミア人たちは、神の助けと自分たちの運動の正しいことを信じて、自分たちを攻撃する最強の軍隊に対抗した。皇帝は、何度となく軍勢を GCJap 133.5

召集して、ボヘミアを攻略しようとしたが、無残な敗北を喫するだけであった。フス派の人々は死の恐怖を乗り越えていたので、何ものも彼らに対抗できなかった。戦争が起こって数年後に、勇敢なジシュカが死んだが、プロコピオスが彼のあとを継いだ。プロコピオスは、ジシュカと同じく勇敢で老巧な将軍であり、いくつかの点では、いっそう有能な指導者であった。 GCJap 134.1

ボヘミア人の敵は盲目の将軍の死を知って、劣勢を挽回する絶好の機会が来たと思った。法王は、フス派に対する十字軍を宣言し、ふたたびおびただしい軍勢がボヘミアに送りこまれた。しかしそれは、大敗北に終わったに過ぎなかった。再度の十字軍が布告された。ヨーロッパのすべての法王教国において、人員と金と軍需品が徴集された。群衆が法王の旗のもとに集合し、フス派の異端者たちをついに全滅させ得ると考えた。大軍は、必勝を期して、ボヘミアに侵入した。人々は、これを撃退するために立ち上がった。両軍は、川を隔てて向かい合うまでに接近した。「十字軍は、数においてはるかに優勢であった。しかし彼らは、はるばる対戦するためにやってきたフス派に対し、川を渡って突撃するのではなくて、黙って相手の軍勢を見ていた」。すると突然、軍隊は不思議な恐怖におそわれた。あの強力な軍隊が、一撃も加えることなく、目に見えない力に追い散らされるように四散してしまった。フス派の軍隊によって、多くの者が殺された。彼らは逃亡兵を追跡して、おびただしい戦利品を手に収め、ボヘミア人は戦争によって衰えるどころか豊かになったのであった。 GCJap 134.2