各時代の大争闘
フスの決意
この時、もう一人の旅人がコンスタンツ市に近づいていた。フスは、自分の身に迫る危険に気づいていた。 GCJap 120.4
彼は、もう二度と会えないかのように、友人たちに別れを告げた。そして火刑への道であることを感じつつ旅を続けた。彼は、ボヘミアの王から安全通行券を得、またジギスムント皇帝からも同様のものを得てはいたが、死ぬこともあり得ると考えて、万事その用意をしていた。 GCJap 121.1
プラハの友人あての手紙の中で彼は次のように言っている。「わたしの兄弟たちよ、……わたしは王からの通行券を持って、多くの恐ろしい敵に立ち向かうために出かけようとしている。……わたしは、全能の神、わたしの救い主に全く信頼している。わたしは、神があなたがたの熱心な祈りに答えて、わたしの口に神の慎しみと神の知恵を賜わり、彼らに抵抗することができるようにしてくださると信じる。そして、神はわたしに聖霊を与えて堅く真理に立たせ、勇敢に、試練と牢獄、そしてもし必要なら残酷な死にすら立ち向かえるようにしてくださると信じる。イエス・キリストは、彼の愛する者のために苦しみにあわれた。それゆえにわれわれは、われわれが自分自身の救いのためにすべてのことを根気よく耐え忍ぶよう、彼がわれわれのために模範を残されたことに対して驚いてよいであろうか。彼は、神である。そして、われわれは、彼に造られたものである。彼は主であって、われわれは、彼のしもべたちである。彼は世界の主であられ、われわれは、卑しい人間である。それにもかかわらず、彼は苦しまれた。とすれば、われわれもまた苦しむべきではなかろうか。特にそれがわれわれのきよめのためであるとすれば。それゆえに、愛する人々よ、もしわたしの死が彼の栄光となるものならば、それが早く来るように、そして、わたしにふりかかるすべての災いをわたしが忠実に耐える力を主がお与えになるように祈ってほしい。しかし、もしわたしがあなたがたのところに帰るほうが良いのであれば、何の汚点も残さずに帰れるように神に祈ろう。すなわち、わたしが、福音真 GCJap 121.2
理のどんな点でも隠すことなく、わたしの兄弟たちが踏み従う立派な模範を残すことができるように祈ろう。おそらく、プラハであなたがたと会うことはもはやないであろう。しかし、全能の神のみこころによって、あなたがたのところに帰ることができれば、その時には、いよいよ確固とした信念をもって、神の律法の知識と愛のうちに進んでいきたい」 GCJap 122.1
フスは、福音の使徒となったある司祭に送ったもう一つの手紙の中で、きわめて謙虚に自分自身の誤りについて語り、自分は「美服をまとうことに喜びを感じ、軽薄なことに時を浪費していた」と自分を責めている。 GCJap 122.2
そして、次のような感動的な勧告をつけ加えた。「あなたは、聖職禄や財産の所有ではなくて、神の栄光と魂の救いを考えるようにせよ。自分の魂以上にあなたの家を飾らぬように注意せよ。何よりも徳を高めることに留意せよ。貧者には、敬虔と謙遜をもって接し、あなたの持ち物を饗応のために消費してはならない。もしもあなたが生活を改めず、ぜいたくをやめないならば、わたしが今懲らしめられているように、厳しく懲らしめられることであろう。……あなたは、幼い時から、わたしの教えを受けたから、わたしの教義を知っている。それだから、これ以上書く必要はない。しかし、わたしは、主の憐れみによって、あなたに願う。どうか、あなたは、わたしが陥ったのを見たどんな種類の虚栄をもまねてはならない」。手紙の封筒には、「わが友よ、わたしが死んだことを確かめるまでは、この封を開かないこと」と書きそえてあった。 GCJap 122.3
フスは、旅行中、至るところで、彼の教義が広まり、彼の運動が歓迎されているのを見た。群衆が彼を出迎え、いくつかの町では長官が町中彼に随行した。 GCJap 122.4