各時代の大争闘
神の摂理と改革事業の進展
神の摂理はさらに事件の動向を支配して、改革事業が進展するための機会を与えた。グレゴリーの死後、二人の対立する法王が同時に選ばれた。二つの対立勢力が、それぞれ絶対無謬を主張して、人々の服従を要求した。おのおのが忠実な者たちの援助を求めて相手に戦いをいどみ、敵対者には恐ろしい破門の宣告をもって、また支持者には天国の報賞を約束して、自分の要求を押しつけた。このような事態は、法王権を大いに弱めた。敵対する両派は互いに他の攻撃に全力をあげていたので、ウィクリフにはしばらくの休息が与えられた。両方の法王は、互いに破門と非難の応酬をし、各自の相反する主張を支持するために多くの血が流された。犯罪と醜聞が、教会内に氾濫した。その間に改革者ウィクリフは、彼の教区ラタワースの閑居で、人々の心を、相争う法王たちではなくて、平和の君イエスに向けるために、熱心に働いていた。 GCJap 100.1
分裂とそれに伴うあらゆる闘争と腐敗とは、人々に法王制の真相を暴露して、宗教改革のために道を開いた。ウィクリフは、彼が出版した『法王の分裂について』というパンフレットの中で、これら二人の聖職者たちが互いに他を反キリストと非難しているのは、真実を語っているのではないか考えるように、人々に訴えた。「神は、悪魔がこのような一人の聖職者によって統治することを許さず、……それを二つに分けて、人々がキリストの名によって、その両方にたやすく打ち勝てるようになさった」と彼は言った。 GCJap 100.2
ウィクリフは主イエスのように、貧しい人々に福音を宣べ伝えた。彼は、自分のラタワース教区内の質素な家々に光を伝えるだけでなくて、英国全土に伝えようと決心した。このことを成し遂げるために彼は、単純で信心深く、真理を愛し、それを伝えるためには何 GCJap 100.3
も惜しまないという説教者の一団を組織した。彼らは至るところへ行き、市場で、大都会の街頭で、そして田舎の小道で説教した。彼らは、老人や病める者、貧しい人たちをたずね、彼らに神の恵みの福音を伝えた。 GCJap 101.1
ウィクリフは、オクスフォードの神学教授として、大学の講堂で神のみ言葉を説いた。彼は彼のもとにある学生たちに真理を忠実に提示したので、「福音博士」と呼ばれた。しかし、彼の生涯の最大の事業は、聖書を英語に翻訳することであった。『聖書の真理と意味について』という著作の中で、彼は、英国のすべての人が、神の驚くべき書を自国語で読むことができるようにするために、聖書の翻訳を意図していることを語っている。 GCJap 101.2