各時代の大争闘

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ローマによる迫害

ワルド派の伝道者たちは、サタンの王国に侵入しつつあったので、暗黒の勢力も厳重な警戒を始めた。悪の君は、真理を前進させようとするあらゆる努力を監視し、自分の代理者たちの恐怖心をあおった。法王教の指導者たちは、これらの素朴な旅商人たちの活動が、彼らの側を危険に陥れる兆であることに気づいた。もし真理の光が、なんの妨げもなしに輝くならば、それは、人々を閉じこめている誤りの厚い雲を一掃してしまうことであろう。それは、人々の心をただ神だけに向けて、ついにはローマの至上権を打破してしまうことであろう。 GCJap 88.3

初代教会の信仰を保っているこの人々の存在そのものが、ローマの背教に対する絶えざるあかしであり、それゆえに、最も激しい憎悪と迫害を引き起こした。彼らが聖書の引き渡しを拒否したことも、ローマにとっては許せないことであった。ローマは彼らを地上から一掃しようとした。こうして、最も恐るべき戦いが、山の中に住む神の民に向かって始められた。また、宗教裁判官(異端審問官)が、彼らの後を追い、罪なきアベルが残忍なカインに殺されるという光景がしばしば繰り返された。 GCJap 88.4

何度となく、彼らの肥沃な土地は荒らされ、住まい GCJap 88.5

や礼拝堂は破壊され、なんの罪もない勤勉な人々の、実り豊かな田園と家庭であったところが、見渡すかぎりの荒れ地となってしまった。飢えた猛獣が血をなめて、ますますたけり狂うように、法王教徒たちは犠牲者たちの苦難を見て、ますます激しく怒りを燃やした。これら純粋な信仰の証人たちの多くは、隠れていた山々から追われ、谷間から狩り出され、深い森林や岩山の峰々に避難した。 GCJap 89.1

こうして追放された人々の品性には、なんの落ち度もなかった。彼らの敵でさえ彼らのことを、平和を愛し、穏やかで、敬虔な人々であると言明している。彼らの主要な罪は、彼らが法王の意志通りには神を礼拝しないということであった。この罪のために、人間または悪魔が考え出すことのできるあらゆる屈辱と侮辱と拷問が、彼らに加えられたのである。 GCJap 89.2

ローマが、憎むべき教派を全滅させようと決意した時、彼らを異端として非難し、滅ぼすように命じた教書が、法王によって出された。彼らは、怠け者であるとか不正直であるとか、秩序を乱すとかと言って訴えられたのではなかった。そうではなくて、信心深く神聖な外観を装いながら、「真の羊の群」を欺く者であると宣言されたのである。それゆえに法王は、「そのような悪人たちの、有害で忌まわしい宗派は」、もし彼らが「それを放棄しないならば、毒蛇のように撲滅せよ」と命じた。この高慢な権力者は、この言葉をふたたび聞くことを予期したであろうか。彼は、この言葉が天の書に記されて、審判の時に彼はそれに直面するのだということを、知っていたであろうか。「わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである」とイエスは言われた(マタイ25章40節)。 GCJap 89.3

この教書は、異端に対する戦いに教会の全員が参加するよう呼びかけた。この残酷な仕事に従事させるための刺激として、それは、「一般または特定を問わず、 GCJap 89.4

すべての宗教的苦行と罰からの赦免を与えた。戦いに加わる者すべてに、どんな宣誓の不履行をも許した。どんな不正によって得た物でも合法と認めた。そして、異端者を殺す者は、すべての罪が赦されると約束した。また、ワルド派の人々に有利な契約はすべて破棄し、彼らの使用人たちに家を去るよう命じ、すべての者に対して、どんな援助をも彼らに与えることを禁じ、そして、すべての者に彼らの財産を奪う権利を与えた」。こうした文書は明らかに、その背後で働く悪の霊を示している。ここに聞こえるのは、キリストの声ではなくて、龍のほえる声である。 GCJap 90.1