各時代の大争闘
世界の真夜中
一三世紀に、法王制の機関中で最も恐ろしいもの、すなわち宗教裁判所(異端審問所)が設けられた。暗黒の君は、法王制の指導者たちと共に働いた。彼らの 秘密会議においてサタンとその天使たちが、悪人たちの心を支配した。しかしそれと同時に、人の目にこそ見えなかったが、神の天使がそのただ中に立ち、彼らの不法な命令の恐るべき記録をとり、とうてい人間の目が見るに耐えない恐ろしい行為の記録を記していたのであった。「大いなるバビロン」は「聖徒の血に酔いしれた」。無数の殉教者たちの寸断された体は、この背信した権力に対する神の復讐を叫び求めた。 GCJap 68.3
法王教は世界の専制君主となった。王も皇帝もローマ法王の命令に服した。人々の運命は、現世のものも来世のものも、彼の支配下にあるように思われた。数百年にわたってローマの教義は、絶対的なものとして広く受け入れられ、その儀式は厳粛にとり行われ、その祝祭はあまねく遵奉された。聖職者たちは尊敬され、豊かに支えられた。この時ほど、ローマ教会が大きな威厳と壮大さと権力を誇った時代はなかった。 GCJap 69.1
しかし、「法王制の真昼は、世界の真夜中であった」。聖書は、民衆だけでなく、司祭たちにさえほとんど知られていなかった。昔のパリサイ人たちと同様に、法王教の指導者たちは、彼らの罪を明らかにする光を憎んだ。義の標準である神の律法を放棄してしまったので、彼らは無制限に権力を行使し、自由に悪事を働いた。詐欺、貪欲、放蕩が広く行われた。人々は、富と地位を得るためにはどんな罪でも犯した。 GCJap 69.2
法王や高位聖職者たちの宮殿は、最も罪深い放蕩の現場であった。何人かの法王たちはあまりにも非道な犯罪を犯したために、世俗の支配者たちが彼らを、許すことのできない極悪な人物としてその地位から退かせようとしたほどであった。ヨーロッパは、幾世紀もの間、学問、芸術、また文化の面で何の進歩もなかった。キリスト教世界は、道徳的、知的麻痺状態に陥っていた。 GCJap 69.3
ローマ教会の権力下にあった世界の状態は、預言者ホセアの言葉の恐ろしくも的確な成就である。「わた しの民は知識がないために滅ぼされる。あなたは知識を捨てたゆえに、わたしもあなたを捨て、……あなたはあなたの神の律法を忘れたゆえに、わたしもまたあなたの子らを忘れる」「この地には真実がなく、愛情がなく、また神を知ることもないからである。ただのろいと、偽りと、人殺しと、盗みと、姦淫することのみで、人々は皆荒れ狂い、殺害に殺害が続いている」(ホセア書4章6、1、2節)。これが神の言葉を捨てた結果であった。 GCJap 69.4