各時代の大争闘
欺瞞の大計画
今や彼は、部下の天使たちの同情を得るために、その偉大な知能の全能力をもって欺瞞の業に打ち込んだ。キリストが彼に警告と勧告をお与えになったことさえ曲解されて、彼の反逆的な計画に利用された。彼は自分を親しく信頼し、かたく結び合っていた者たちに向かって、自分は神から間違った判断をされている、自分の地位は尊敬してもらえない、また自分の自由は制限されようとしていると語った。 GCJap 571.2
彼はキリストの言葉を間違ったふうに伝えただけでなく、キリストは天の住民の前で彼に屈辱を与えようとしていると言って、ごまかしと露骨な虚偽をもって神のみ子を非難した。彼はまた、自分と忠実な天使たちとの間に、ありもしない問題を引き起こそうとした。彼は、忠誠心を失わせて自分の側に完全に引き入れることのできなかった者たちに向かって、天の住民の利益に対して冷淡であると言って非難した。彼は自分自身のしている行為を、神に忠誠を保っている者たちのせいにした。また彼は、神が自分に対して不公正であるという彼の非難を裏づけるために、創造主のみ言葉と行為を間違ったふうに伝えるという手を用いた。神の御目的について巧妙な議論をすることによって天使たちを困惑させるのが、彼の政策であった。彼は単純なことの一つ一つに神秘の衣を着せ、また巧妙に曲解して、神の最も明白なみ言葉に対して疑いを投げかけた。彼は神の統治と密接に関連した高い地位を占めていたので、彼の言うことにはいっそう大きな力が加わり、多くの者が引きずられて彼に加担し、神の権威に対する反逆に加わった。 GCJap 572.1
賢明な神は、このような不満の精神が積極的な反乱に発展するまで、サタンがその行為を進めるのを許された。すべての者が、サタンの計画の真相と傾向とを知るようになるためには、彼の計画を十分に発展させる必要があった。ルシファーは油を注がれたケルブとして、非常にあがめられていた。彼は天の住民から非常に愛されていたので、彼らに対する影響力は大きかった。神の統治には天の住民だけでなく、神がお造りになったすべての世界が含まれていたので、サタンは、天使たちを反逆に加わらせることができるならば、他世界もまきこむことができると考えた。サタンは、自分の目的を達するために、詭弁と虚偽とを用いて、巧妙に彼の疑問点をもちだした。彼の欺瞞の能力はたいしたものであり、また虚偽の仮面で変装することによって、彼は有利な立場を得ていた。忠誠な天使たちでさえ、彼の本性を十分に見分けたり、また彼の行為がどこに向けられているかを見たりすることができなかった。 GCJap 572.2
サタンはもともと非常な栄誉を受けていたのであり、またその行為のいっさいが神秘に包まれていたので、彼の行為の真相を天使たちの前にあばくことは困難であった。罪は、完全に姿をあらわすまでは、それがどんなに邪悪なものであるかがわからない。それまで神の宇宙には罪というものがなかったので、天の住民は罪の性質と邪悪さについてなんの概念も持っていなかった。彼らは、神の律法を無視することから生じる恐るべき結果を、見分けることができなかった。サタンは、最初は神に対する忠誠をもっともらしく告白することによって、自分の行為を隠していた。彼は、神のみ栄え、神の統治の安定、天の全住民の幸福を増進しようとしているのだと主張した。部下の天使たちの心に不満を吹き込みながら、彼は、不満を取り除こうとしているかのようにたくみに見せかけた。彼が神の統治の秩序と律法の変更を強調した時も、天の調和を保つためにはそうすることが必要であるというふうに見せかけた。 GCJap 573.1