各時代の大争闘
アメリカの変貌
「それには小羊のような角が二つあっ」た。小羊のような角は、若々しさと無垢と温順さとを示すもので、一七九八年に「上って来る」のを預言者が見た時の米国の性格をよくあらわしている。最初、米国に逃れ、王の圧迫と司祭たちの迫害からの避難所を求めた亡命キリスト者たちの中には、政治的自由と宗教的自由の広い基盤の上に政府を樹立しようと決意した者が多くあった。彼らの意見は、独立宣言の中に織り込まれ、「すべての人は平等に造られ」「生命、自由、および幸福の追求」という奪うことのできない権利を与えられている、という偉大な真理の表明となっている。そして、憲法は、国民に自治権を保証し、一般投票によって選ばれた代議員が法律の制定と執行にあたるべきことを規定している。宗教の自由も保証され、すべての人は良心の命じるところに従って神を礼拝することが許されている。共和主義とプロテスタント主義が、国家の根本原則となった。これらの原則が、その権力と繁栄の秘訣である。全キリスト教国の、圧迫され踏みにじられた人々が、関心と希望を抱いてこの国に目を向けた。幾百万という人々がその岸辺にやってきて、米国は、世界で最も強い国の一つに数えられるまでになった。 GCJap 505.2
しかし、小羊のような角をもった獣は、「龍のように物を言った。そして、先の獣の持つすべての権力をその前で働かせた。また、地と地に住む人々に、致命的な傷がいやされた先の獣を拝ませた。……地に住む人々を惑わし、かつ、つるぎの傷を受けてもなお生きている先の獣の像を造ることを、地に住む人々に命じた」(黙示録13章11~14節)。 GCJap 505.3
この象徴の持つ、小羊のような角と龍のような声は、ここであらわされている国家の宣言と実行との著しい矛盾を示すものである。国家が「物を言う」とは、その立法および司法権の活動のことである。米国は、そのような行為によって、国家の方針の基礎として宣言した自由と平和の原則を裏切るのである。それが「龍のように」語り、「先の獣の持つすべての権力」を働かせるという預言は、明らかに、それが、龍やひょうに似た獣によって象徴される国々があらわした狭量と迫害の精神を持つようになるということを予告している。 GCJap 506.1
そして、二つの角を持った獣が「地と地に住む人々に、……先の獣を拝ませ」るという言葉は、この国が権力を行使して、法王権に対する礼拝行為となるような何かの遵守を強要することを示している。 GCJap 506.2
このような行動は、この政府の原則、自由制度の精神、独立宣言の率直厳粛な言明、そして憲法に、全く相反するものである。米国の建国にあたった人々は、世俗の権力が教会のことに用いられて、その当然の結果として狭量と迫害が起こることを避けようと、賢明にも努めた。憲法には、「国会は、宗教の設立に関する、もしくはその自由な活動を禁ずる法律を制定してはならない」、また、「合衆国のいかなる公職につくにあたっても、その資格として、宗教的条件を課してはならない」とある。国民の自由を擁護するこれらの条項にはなはだしく違反することなしには、国権は、どんな宗教的法令も施行することはできない。しかし、そのような矛盾した行動をとることは、象徴に示されているとおりである。小羊のような角を持った獣は、純潔柔和で悪意のないことを公言しながら、龍のように物を言うのである。 GCJap 506.3
「地に住む人々を惑わし……(彼らに)獣の像を造ることを……命じた」。ここに、立法権が国民にある政体が明示されている。これは、合衆国が預言に示された国であるというきわめて顕著な証拠である。 GCJap 507.1