各時代の大争闘
スウェーデンの改革者ペトリ兄弟
スウェーデンにおいても、ウィッテンベルクの井戸から学んだ青年たちが、生命の水を自国の人々に伝えた。スウェーデンの宗教改革の指導者のうちの二人、オラフ・ペトリとローレンティウス・ペトリは、オレブロの鍛冶屋の息子たちで、ルターとメランヒトンの下で学び、こうして学んだ真理を熱心に教えた。オラフは、偉大な改革者ルターのように、熱と雄弁によって、人々を覚醒させた。一方ローレンティウスは、メランヒトンのように、学識があり、思慮深く静かな人であった。両方とも、熱心に神を敬う人たちで、神学に深く通じ、断固とした勇気をもって真理を推進させた。法王側の反対はやまなかった。カトリックの司祭たちは、無学で迷信的な人々を扇動した。オラフ・ペトリは、しばしば暴徒に襲われ、命からがら逃げたことも何度かあった。しかし、これらの改革者たちは、王の愛顧と保護を受けていた。 GCJap 279.1
ローマ教会の支配の下で、人々は貧困に苦しみ、圧迫にあえいだ。彼らは、聖書を持っていなかった。そして心に光を伝えない単なるしるしと儀式だけの宗教を持っていたので、彼らは、彼らの異教の先祖たちの、迷信的信仰と多神教的習慣に戻りつつあった。国民は党派に分かれて相争い、絶えまなく続く争いは、すべての者の悲惨を増した。王は、国家と教会の改革を決意し、ローマと戦うためにこれらの有能な援助者を歓迎した。 GCJap 279.2
オラフ・ペトリは、スウェーデン国王と指導者たちの前で、ローマ側の支持者に対抗して、改革主義の信仰の教義を立派に擁護した。彼は、教父たちの教えは、 GCJap 279.3
聖書と一致するものだけを信じるべきであると言った。また、信仰上の重要な教義は、聖書に簡単明瞭に示されているから、すべての者が理解できると言明した。「わたしの教はわたし自身の教ではなく、わたしをつかわされたかたの教である」とキリストは言われた(ヨハネ7章16節)。そして、パウロは、彼が受けた福音以外のことを宣べ伝える者は、のろわれるべきであると言った(ガラテヤ1章8節参照)。「それでは、いったいだれが勝手に教義を規定して、それが救いに必要なものであると強制することができるでしょうか」と改革者は語った。 GCJap 280.1
彼は、教会の法令が神の命令に反する時は、権威がないことを示し、プロテスタントの「聖書、そして聖書のみ」という大原則が、信仰と行為の規則であることを主張した。 GCJap 280.2
この論争は、割合目立たない程度のものであったが、しかし「宗教改革者側の陣営が、どのような人々によって占められていたかを」示してくれるものである。「彼らは、無学で党派心に強く、そうぞうしい論争家では、決してなかった。彼らは、神の言葉を研究した人々であり、聖書の兵器庫が彼らに与えた武器を、十分に使いこなせる人々であった。博学の点においては、彼らは、彼らの時代に先んじていた。われわれは、ウィッテンベルクやチューリヒのような輝かしい中心地、また、ルターやメランヒトン、ツウィングリやエコランパデウスのような著名な人物に注目する時、当然、彼らは運動の指導者であって、驚くべき能力と学識の持ち主であったが、その他の人々はそうではなかったように考えがちである。しかし、遠く離れたスウェーデンの舞台に目を転じ、オラフとローレンティウス・ペトリというつつましい名前に目を向けてみよう。教師たちからその弟子たちへと目を転じるのである。するとそこに、われわれは何を見いだすであろうか。……学者と神学者である。福音の真理の全体系を完全にこなして、学校の哲学者やローマの司教たちを容易に打ち負かす人々である」 GCJap 280.3
この論争の結果、スウェーデンの王は改革主義を受け入れ、その後まもなく、国会が賛成した。新約聖書は、オラフ・ペトリによって、スウェーデン語に翻訳され、王の希望によって、二人の兄弟は聖書全体の翻訳にとりかかった。こうして、スウェーデン人は、初めて神の言葉を自国語で持つことができた。また、王国全体において、牧師は聖書を説き明かすように、そして学校において子供たちに聖書を読むことを教えるように、国会で定められた。 GCJap 281.1
無知と迷信の暗黒は、徐々にではあるが確実に、福音の祝福された光によって追い払われていった。ローマの圧迫から解放された国は、これまで到達したことのない力と偉大さに達した。 GCJap 281.2
スウェーデンは、プロテスタント主義のとりでの一つとなった。一世紀後、非常な危険の時に、この小さく弱かった国―─ヨーロッパにおいて、支援の手を差しのべた唯一の国―─が、三〇年戦争の恐ろしい戦いに際して、ドイツを救ったのである。北欧全土は、ふたたびローマの圧制下に置かれるかと思われた。ドイツが法王側勝利の形勢を一変させて、ルター派同様にカルバン派のプロテスタント主義の信教の自由を確保し、宗教改革を受け入れたこれらの国々に、良心の自由を回復することができたのは、スウェーデンの軍隊のおかげであった。 GCJap 281.3