各時代の大争闘
バーデン会談とその影響
ローマ側の人々は、勝利を見越して、宝石をちりばめた美服をまとって意気揚々とバーデンに乗り込んでいた。彼らの食卓には、ぜいたくのかぎりを尽くした美食と最高の酒が豊富に並べられていた。彼らは、こうして陽気な歓楽にふけって、彼らの聖職者としての義務を軽視していた。改革者たちは、それとは全く対照的に、乞食の一行よりはややましな程度とみなされるほど質素で、彼らの食事はつましいものであり、長く食卓にとどまってなどいなかった。エコランパデウスの宿の主人は、彼がいつも部屋で研究をしているか、それとも祈っているかしているのを見て非常に驚き、この異端者はとにかく「非常に敬虔」であると報告している。 GCJap 211.3
議場において、「エックは、立派に飾られた講壇に、高慢な態度で上ったが、謙虚なエコランパデウスは、質素な衣服をまとっており、エックの前にあった粗末な造りの腰かけに座らせられた」。エックは、大声で、無限の確信をもって語った。信仰の擁護者には多額の報酬が与えられることになっていたので、彼の熱心は名誉とともに金銭にも刺激されていた。そして議論に失敗すると、相手を侮辱し、口汚くののしりさえするのであった。 GCJap 212.1
エコランパデウスは、慎み深く、自己を過信せず、論争を避けていた。そして、「私は神の言葉以外のどんな審判の標準も認めない」という厳粛な誓いの言葉をもって議論に応じた。エコランパデウスは、柔和で礼儀正しかったが、力強く、ひるむことなく立った。法王側がいつものように、教会の慣習に関する権威を主張した時にも、改革者は聖書を固持して揺るがなかった。「わがスイスにおいては、憲法に従ったものでないかぎり、慣習は無効である。こと、信仰に関しては、聖書がわれわれの憲法である」と彼は言った。 GCJap 212.2
この討議にあたった両者の対照は、影響を及ぼさずにはいなかった。柔和で慎重な態度のうちに提示された、改革者の冷静で明快な理論は、エックの高慢でそうぞうしい憶説をきらった人々の心に訴えた。 GCJap 212.3
討議は一八日間続いた。その最後にあたって、法王側は、大いなる確信をもって勝利を宣言した。議員たちの多くも、法王側に加担した。議会は改革者たちの敗北を宣し、指導者ツウィングリと共に教会からの除名を布告した。しかし、会議の結果もたらされたものは、どちら側が有利であったかを明らかにした。すなわちこの討議の結果、プロテスタントの運動が強力に推進され、その後まもなく、ベルンとバーゼルという重要な都市が、改革の側に立つことを宣言したのであった。 GCJap 212.4