各時代の大争闘
ルター、ウォルムスを去る
まもなくルターは、皇帝の方から帰国を命じられた。そして彼は、この指示の次には、すぐに有罪の宣告が下されることを知っていた。彼の前途を暗雲が覆った。しかし、ウォルムスを去る時、彼の心は喜びと賛美に満たされた。「悪魔自身が法王のとりでを守った。しかしキリストはこれに大きな破損を与え、サタンは、主が彼よりも力あることを告白しなければならなかった」と彼は言った。 GCJap 193.4
ルターは、出発した後も、彼の堅い決意が反逆と間違えられないために、皇帝に手紙を書いた。「人間の生命が依存している神の言葉のこと以外において、わたくしが、名誉であれ不名誉であれ、生であれ死であっても、直ちに熱誠こめて陛下にお従いしようとするものでありますことは、心を探られる神が、わたくしの証人であります。現世のいっさいのことにおいて、わたくしの忠誠に動揺はございません。と申しますのは、ここで得るも失うも、救いには関係がないからであります。しかしながら、永遠のことに関しましては、人間が人間に従うことは神のみ旨ではございません。なぜならば、霊的事柄におけるこのような服従は、事実上の礼拝であり、それはただ創造主にのみ帰すべきものだからであります」 GCJap 194.1
ルターは、ウォルムスからの帰途、行く時よりも盛大な歓迎を受けた。高位の聖職者たちが破門された修道士を歓迎し、長官たちが、皇帝に譴責された者に敬意をあらわした。彼は、禁じられてはいたが、勧められるままに説教壇に立った。「わたしは神の言葉を鎖につなぐとは誓わなかったし、これからも決してそんなことはしない」と彼は言った。 GCJap 194.2
彼がウォルムスを去ってまもなく、法王側は皇帝に迫って、ルターに対する布告を発布させた。この布告の中で、ルターは、「人間の形をとり修道士の衣をまとったサタン自身である」と告発された。彼の通行券の期限が終わるとすぐに彼の運動をやめさせるよう、命じられていた。だれであっても、彼をかくまったり飲食を与えたり、言葉であれ行為であれ、公私を問わず、彼を支援し助けることが禁じられた。彼は、発見されたならば直ちに逮捕され、官憲に引き渡されねばならなかった。彼の支持者たちもまた、投獄されて財産を没収されなければならなかった。彼の著書は破棄されねばならなかった。そして、最後に、この布告に反抗する者は、みな、同様の宣告を受けなければなら GCJap 194.3
なかった。ザクセンの選挙侯と、ルターに好意的な諸侯たちは、ルターの出発後すぐにウォルムスを去っていたので、皇帝の命令は議会の賛成を得た。こうして法王側は喜んだ。彼らは、宗教改革の運命はもう決まったと考えた。 GCJap 195.1