各時代の大争闘
われここに立つ!
以上のことを、ルターはドイツ語で語った。そして今度は、同じ言葉をラテン語で繰り返すように要求された。彼は、これまでの奮闘によって疲れきっていたけれども、それに応じて、ふたたび、最初と同様の明快さと力強さをもって演説した。これは神の摂理の導きであった。多くの諸侯たちの心は、誤りと迷信に目がくらんでいたので、最初の演説では、ルターの議論の力を十分に認めることができなかった。しかし、ふたたび繰り返して聞いたために、示された要点をはっきりと理解することができた。 GCJap 185.3
光に対してかたくなに目を閉じ、真理に説得されまいと心を決めていた人々は、ルターの力強い言葉に激怒した。彼が語り終えた時、議会の代弁者は怒って言った。「あなたは質問されたことに答弁していない。……あなたには、明瞭で正確な答えが要求されている。……あなたは取り消すのか、取り消さないのか」 GCJap 186.1
改革者は答えた。「皇帝陛下と殿下方は、わたくしに簡単で明瞭で正確な答えを要求しておられますので、ここにお答えいたします。それは次の通りであります。わたくしはわたくしの信仰を、法王にも会議にも従わせることはできません。と申しますのは、両者ともしばしば誤りを犯し、また互いに矛盾してきたということが明白だからであります。 GCJap 186.2
それゆえ、わたくしは、聖書からの証明、あるいは明瞭な議論によって、納得させられないかぎり、また、わたくしが引用した聖句によって納得させられないかぎり、そして、このようにして、わたくしの良心が神のみ言葉によって義務づけられないかぎり、わたくしは取り消すことができませんし、取り消そうとも思いません。なぜなら、キリスト者が良心にそむいて語ることは、危険だからであります。ここに、わたくしは立ちます。わたくしは、これ以外に何もできません。神よ、わたくしを助けたまえ。アーメン」 GCJap 186.3
こうして、義人ルターは、神のみ言葉の確かな土台の上に立った。天からの光が彼の顔を照らした。彼の偉大で純潔な品性、彼の心の平和と喜びとが、すべての者に明らかに示された。こうして、彼は、誤りの力に対抗してあかしを立て、世に勝つ信仰がいかに優れたものであるかを証明した。 GCJap 186.4
集まった者はみな、しばらくの間、驚きのあまり何も言えなかった。ルターは、最初に答えた時に、低い声で、敬意をあらわしながら、従順な態度で話した。法王側はこれを、彼の勇気がくじけ始めた証拠であると解釈した。彼らは、延期の願い出を、取り消しの前 GCJap 186.5
提に過ぎないと考えた。カール自身さえ、修道士の疲れた様子、彼の質素な衣服、そして、彼の飾り気のない話に対し、半ば軽蔑的に、「この修道士は、わたしを異端者にすることは決してできない」と言った。しかるに今、彼の議論の力と明瞭さと共に、彼があらわした勇気と堅固さとに、すべての者は驚き入った。皇帝も賛嘆して、「この修道士は、大胆に揺るがぬ勇気をもって語る」と叫んだ。ドイツの諸侯たちの多くは、彼らの国のこの代表者に誇りと喜びを感じたのである。 GCJap 187.1