各時代の大争闘
青年時代の学び
一八歳の時、彼はエルフルト大学に入った。この頃には彼の境遇は、年少の頃よりは順調で、将来に明るい希望が持てた。彼の両親は、節約と勤勉によって、相当の資産を得ていたので、必要な援助を全部支給することができた。そして、彼は、賢明な友人たちの感化を受けて、前に受けた教育の陰うつな感化を、いくぶんか少なくすることができた。彼は、第一流の著者たちの研究に専念し、彼らの最も重要な思想を努めて心に蓄え、賢明な人々の思想を自分のものにした。彼は、かつての教師たちの苛酷な訓練下にあってさえ、早くから頭角をあらわしたが、ここではよい環境に恵まれて、彼の知力は急速に発達した。 GCJap 141.1
彼は、記憶力が強く、想像力に富み、論理力も豊かで、たゆまず研究に励んだので、まもなく学友たちの間で第一人者となった。知的訓練は彼の理解力を円熟させ、知力を活発にし、知覚を鋭敏にして、彼を彼の生涯の闘争のために準備させつつあった。 GCJap 141.2
ルターの心に宿った主をおそれる思いは、彼を目的堅固な者にするとともに、神のみ前で心から謙遜な者にした。彼は、自分が神の助けに依存していることを常に感じていた。そして、毎日祈りをもって一日を始めることを忘れなかった。彼の心は、絶えず、導きと支えとを祈り求めていた。「よく祈ることは、勉強の半ば以上を成し遂げることだ」と彼はよく言った。 GCJap 141.3
ある日、ルターは、大学の図書館で本を調べていた時に、ラテン語の聖書を発見した。彼は、こうした本を見たことがなかった。そうしたものの存在さえ知らなかったのである。彼は、福音書や使徒書簡の一部が、公の礼拝の時に朗読されるのを聞き、それが聖書の全部であると思っていた。ところが彼は、今初めて、神の言葉の全体を見たのである。畏敬と驚きをもって、 GCJap 141.4
彼はその神聖なページを繰った。彼は、胸をどきどきさせながら、生命の言葉を自分で読み、時々息をついては、「神がこのような本をわたしに下さったなら!」と叫ぶのであった。天使が彼のそばにいて、神のみ座からの光が、真理の宝を彼に理解させた。彼は、神の怒りを招くことを常に恐れていたが、今、これまでになく、自分の罪人としての状態を痛感した。 GCJap 142.1