各時代の大争闘

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エルサレム陥落

それは、ローマ軍にとって恐るべき光景であった。では、ユダヤ人にとってはどうであったか。全市を見下ろす山頂全体が噴火山のように燃え上がった。建造物は次々と大音響を立てて倒れ、火の海にのまれた。杉ぶきの屋根は一面の火と変わり、金色の尖塔は赤い火の柱のように輝いた。門塔は炎と煙を高く吹き上げた。近くの山々は火に照りはえ、黒い人影が恐怖と不安にかられつつ、滅亡の様を眺めていた。都の城壁と高台のほうにも、絶望に青ざめた人々や、無益な復讐の念に顔をしかめた人々が群がっていた。走りまわるローマの兵隊の叫び声や、炎の中で倒れる反乱兵たちのうめき声が、猛火のうなりと材木の落下する大音響に混じって聞こえた。高台の人々の叫び声が山々にこだまし、城壁のまわり一面に、泣き叫ぶ声と嘆き悲しむ声が満ちた。飢えて死にひんしている人々は、わずかに残った力をふりしぼって、苦悩と悲痛の叫びをあげた。 GCJap 40.1

「城内の殺害は、城外の光景よりいっそう悲惨なものであった。男も女も、老いも若きも、反乱兵も祭司も、戦った者もあわれみを請うた者も、みな差別なく殺害された。殺された者の数は、殺害者の数を上回った。 軍隊は死者の山をよじのぼって、絶滅の仕事を続けねばならなかった」 GCJap 40.2

神殿が破壊された後、まもなく、全市がローマ軍の手に落ちた。ユダヤの将軍たちは難攻不落の要塞を放棄したので、ティトゥスがそこに来た時には、だれも残っていなかった。彼はそれを見て驚き、これを彼の手に与えたのは神であると言った。というのは、どんなに強力な兵器でも、この巨大な要塞の胸壁を打ち破ることはできなかったからである。都も神殿もともに完全に破壊され、神殿の跡は、「畑のように耕され」た(エレミヤ書26章18節)。包囲とその後の虐殺によって死んだ者は百万人以上であった。生存者は、捕虜として連れていかれたり、奴隷に売られたり、勝利者の凱旋を飾るためにローマへ引かれて行ったりした。また円形劇場で野獣の餌食になった者もあれば、流浪の民として世界中に散らばった者たちもいた。 GCJap 41.1