各時代の大争闘
「理性の女神」
「愚かな者は心のうちに『神はない』と言う」(詩篇14篇1節)。そして、主は、真理を曲解する者について、「彼らの愚かさは……多くの人に知れて来るであろう」と言われた(テモテ第二・3章9節)。フランスは、「いと高く、いと上なる者、とこしえに住む者」である生きた神の礼拝を放棄してまもなく、理性の女神の礼拝という低劣な偶像礼拝に陥った。不品行な一女性が、この理性の女神に仕立てられた。しかも、これが、国民を代表する議会において、そして、行政と立法の最高の権威者たちによって、行われたのである。歴史家は、次のように言っている。「この狂気の時代の儀式の一つは、不合理と不敬虔とを結合した点で、他に類を見ない。議会の扉が広く開かれ、音楽隊を先頭に、市当局の役員が厳粛な行列を作って、自由の賛歌を歌いながら入ってきた。そして、これから彼らが礼拝する対象、すなわち、彼らが理性の女神と称するところの、ベールをかけた女性を案内してきた。いよいよ会場内に入ると、彼らは厳かに彼女のベールを脱がせて、議長の右側に座らせた。そしてその時人々は、彼女がオペラのダンサーであることに気づいた。……この女性に対して、フランスの国会は、彼らの礼拝する理性に最もふさわしい代表者として公の敬意をあらわしたのである。 GCJap 316.3
この不敬虔で、言語道断の無言劇は流行した。理性の女神の除幕式は、革命の最高潮に遅れをとるまいとする住民のいる、国内の至るところで繰り返され模倣された」 GCJap 317.1
理性の女神の礼拝を提案した演説者は言った。「代議士諸君、今や狂信は理性に敗れた。そのかすんだ目は、輝かしい光に耐えられなかった。今日、無数の群衆がゴシックの丸天井の下に集まり、初めて真理を反響させたのである。フランス人は、ここで唯一の真の礼拝、自由と理性の礼拝を行った。ここでわれわれは、共和国の軍隊の隆盛を祈った。ここでわれわれは、生命のない偶像を捨てて、理性、生命のある像、自然の傑作を礼拝したのである」 GCJap 317.2
女神が議場に入ってきた時、演説者は彼女の手をとり、会衆に向かって言った。「人間たちよ。あなたがたの恐怖が造り出した神の、無力な怒りの前に震えるのをやめよ。これからは、理性以外の神を認めるな。わたしは、その最も高貴で純粋な像を紹介する。もしあなたがたが偶像を持たねばならぬのならば、このようなものにだけ犠牲をささげよ。……堂々たる自由の殿堂の前で、理性から幕を除こう!」 GCJap 317.3
「女神は、議長から抱擁を受けたあとで、豪華な車に乗せられ、神の地位につくために、大群衆の中を通ってノートルダムの聖堂へ導かれた。ここで彼女は、高い祭壇にあげられて、列席したすべての者の礼拝を受けた」 GCJap 317.4
これに続いてまもなく、公衆の前で聖書が焼かれた。ある時、「民間博物館協会」の人々が、「理性万歳!」と叫びながら市の公会堂に入った。棒の先には、半焼けになった何冊かの本を突き刺していたが、その中には、祈祷書、ミサ典書、旧新約聖書などがあった。それらは「人類をして犯さしめたあらゆる愚行を、大いなる火でもって償ったのである」と会長は言った。 GCJap 318.1