各時代の大争闘
アウグスブルクの議会
宗教改革は、地上の偉大な人々の前に、卓越した存在としてあらわれることになった。フェルディナント王は、福音を信じた諸侯の訴えを拒んだのであったが、彼らは、皇帝および教会と国家の高位高官の集まった面前で、彼らの信仰について述べる機会が与えられた。カール五世は、国内を騒がせた紛争を静めるために、シュパイエルの抗議の翌年、アウグスブルクにおいて議会を開き、自分自身が議長になると発表した。そこへ、プロテスタントの指導者たちが召喚された。 GCJap 237.4
宗教改革は、大きな危険にさらされた。しかし、その支持者たちは、なお彼らの運動を神にゆだね、福音のために堅く立つ決意であった。ザクセンの選挙侯は、議会に行かないように大臣たちから勧告された。皇帝は諸侯をわなに陥れようとして、彼らの出席を要求している、と大臣たちは言った。「強力な敵がいる町に行って、その城内に自分を閉じこめることは、すべてを危険にさらすことではありませんか」。しかし雄々しくも、「諸侯はただ、勇気をもって身を処せばよい。そうすれば、神の事業は救われる」と断言する人々もいた。「神は忠実な方である。神はわれわれを捨てられない」とルターは言った。選挙侯は従者たちを連れて、アウグスブルクに向かって出発した。すべての者は、彼がさらされている危険を知っていた。そして、多くの者は沈うつな顔をして、重い気持ちをもって道を進んだ。しかし、コーブルクまで同道したルターは、その旅行中に作った「神は、わがやぐら」という讃美歌を歌って、沈みがちな彼らの信仰を奮い起こさせた。霊感のこもった歌声を聞いて、多くの者の心の不安は去り、重い心は軽くされた。 GCJap 238.1
改革側の諸侯は、自分たちの見解に聖書の証明を添えて組織立てた宣言書を、議会に提出することにした。そして、その作成の任務は、ルターとメランヒトンとその同僚たちにゆだねられた。この信仰告白は、プロテスタントの者たちによって、彼らの信仰の表明として受け入れられた。そして、彼らは、この重要な書類に署名するために集まった。それは、厳粛な試練の時であった。改革者たちは、この運動が政治問題と混同されることがないよう、気を使っていた。彼らは、宗教改革が、神の言葉から出る感化以外のどんな力をも行使すべきでないと感じていた。 GCJap 238.2
キリスト者の諸侯が信仰告白に署名しようと進み出た時、メランヒトンは彼らをさえぎって、「これらのことは、神学者や聖職者が提議すべきものです。地上の偉大な人々の権力は、他のことのために保留しておかれたい」と言った。ザクセンのヨハンは、次のよう GCJap 238.3
に答えた。「いや、わたしを除外されては困る。わたしは、自分の王冠のことなど問題とせず、正しいと思ったことをする決意である。わたしは、主を告白したい。わたしの選挙侯としての王冠や王衣は、わたしにとって、イエス・キリストの十字架ほど尊くない」。彼は、こう言って自分の名を署名した。諸侯の一人は、ペンをとって言った。「わたしの主イエス・キリストのみ栄えのためであるならば、……わたしの財産も生命も捨てる覚悟である」。さらに次のように言った。「この信仰告白の中に含まれている教義以外のものを受け入れるよりは、むしろ、わたしの国民と国家を捨て、無一物で父祖の地を追われることを望む」。これら神の人々は、このような信仰と勇気を持っていた。 GCJap 239.1