各時代の大争闘
危険な妥協案
宗教の自由は、法的に確立されていた。そして、福音主義に立つ諸州は、彼らの権利の侵害に反対する決意をした。ルターは、依然としてウォルムスの勅令によって破門されていたので、シュパイエルに行くことは許されなかった。しかし、彼の同労者と、この危機において神の事業を擁護するために神が起こされた諸侯とが、彼の代理をつとめた。前にルターを保護したザクセンの高潔なフリードリヒ選挙侯は、もうこの世の人ではなかった。しかし、彼の兄弟で後継者のヨハン公も喜んで改革を歓迎し、平和の愛好者でありながら、信仰に関するすべてのことについては非常な努力と勇気とを示した。 GCJap 229.1
司祭たちは、宗教改革を受け入れていた諸州が、ローマの支配に絶対的に従うことを要求した。しかし改革者たちは、以前に許されていた自由を主張した。非常な喜びをもって神の言葉を受け入れた諸州を、ふたたびローマの支配下に置くことに、彼らは同意することができなかった。 GCJap 229.2
そこで、ついに妥協案として、宗教改革がまだ確立されていないところにおいては、ウォルムスの勅令を施行すべきことが提案された。そして、「その勅令に従わない州、また、これに従おうとすれば反乱が起こる危険のあるところでは、少なくとも、新しい改革をなさず、論争点には触れず、ミサを行うことに反対せず、ローマ・カトリック信者にルター主義を受け入れることを許さないようにする」ことが提案された。この案が議会を通過し、法王側の司祭と司教たちは、大いに満足した。 GCJap 229.3
もしこの勅令が実施されるならば、「宗教改革は、それがまだ伝わっていないところに……伝えられることができず、また、それがすでに伝えられたところでは、堅固な基礎の上に確立されることもできなかった」。言論の自由が禁止され、改宗することも許されなくなる。そして、このような制限と禁止に改革支持者たちは直ちに服さなければならなかった。世界の希望は、消え去るかと思われた。「ローマの教権制度の復興が……古来の悪弊を再びもたらすことは確かだった」。そして、狂言と紛争のために「すでに激しく動揺している事業を、完全に崩壊させる」機会は、すぐに見いだされることであろう。 GCJap 230.1