各時代の大争闘
聖書のドイツ語訳
ルターは、ワルトブルクから帰るとすぐに、新約聖書の翻訳を完成した。そしてまもなく、ドイツ国民は、福音を自国語で手にすることができた。この翻訳は、真理を愛するすべての人々から、非常な喜びをもって迎えられた。しかし、人間の伝説や人間の律法を選ぶ人々からは、軽蔑され拒絶された。 GCJap 223.2
司祭たちは、これからは一般の人々が神の言葉の戒めについて自分たちと討論することができ、こうして自分たちの無知が暴露されるのではないかと考えて驚愕し、不安になった。彼らの肉的な理論という武器は、霊の剣の前には無力であった。ローマは全力をあげて、聖書の配布を妨害した。しかし、教書も破門も拷問も、みな無駄であった。聖書を非難し禁止すればするほど、人々は、聖書の教えを知ろうと欲した。読むことができる者はみな、自分で神の言葉を熱心に研究した。彼らはそれを、持ち歩いて繰り返し読み、その大部分を暗唱するまでは満足しなかった。ルターは、新約聖書が歓迎されたのを見て、直ちに旧約聖書の翻訳を開始し、でき次第分冊にして発行した。 GCJap 223.3
ルターの著書は、都市でも村でも歓迎された。「ルターと彼の同志たちの作ったものを、他の者たちが配布した。修道院制度の不法を悟って、怠慢な長年の生活を活動的なものに一変しようと望んだが、しかし神の言葉を宣言するには無知すぎた修道士たちは、各地を旅して村々や戸ごとを訪問し、ルターとその仲間の著書を売った。ドイツはまもなく、こうした勇敢な文書伝道者の群れであふれた」 GCJap 224.1
これらの著書は、貧富や学識の有無を問わず、非常な興味をもって研究された。村の学校の教師たちは、夜、炉辺に集まった小さな群れに、それを読んで聞かせた。こうした努力のたびに、幾人かの魂が真理を認めて喜んで言葉を受け入れ、今度は彼らが、福音を他の人々に伝えた。 GCJap 224.2
「み言葉が開けると光を放って、無学な者に知恵を与えます」という霊感の言葉が実証された(詩篇119篇130節)。 GCJap 224.3
聖書の研究は、人々の心に大きな変化を起こしつつあった。これまで法王権は、その支配下にある者を鉄のくびきで縛り、無知と堕落に陥れていた。形式の迷信的遵守が厳格に継続されていたが、そのすべての儀式において、心や知性はなんのかかわりも持たなかった。しかしルターの説教は、神のみ言葉の明白な真理を示すとともに、み言葉そのものが、一般の人々の手に渡ったことによって、彼らの眠っていた能力を呼びさまし、彼らの霊性を清めて高尚にするだけでなく、知性に新しい力と活気を与えたのである。 GCJap 224.4