各時代の大争闘

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偽預言者たち

これらの預言者たちの1人は、天使ガブリエルから教えを受けたと主張した。彼と結束した一学生は、自分の勉強を放棄し、自分は神ご自身から、神の言葉を説明する知恵が与えられたと宣言した。他に、生来狂信的な傾向の者たちが彼らに加わった。こうした狂信家の行動によって、少なからず騒ぎが起こった。ルターの説教によって、至る所の人々は改革の必要を感じるようになっていたが、今、真にまじめな人々のなかには、新しい預言者たちの主張に惑わされる者があった。 GC 1680.5

この運動の指導者たちは、ウィッテンベルクに行き、メランヒトンと彼の同労者たちに、彼らの主張を訴えた。「われわれは、人々を教育するために神に遣わされた。われわれは、親しく主と話してきた。われわれは、何が起こるかを知っている。一言で言えば、われわれは使徒であり、預言者である。そして、ルター博士に訴える」と彼らは言った。2 GC 1680.6

改革者たちは、驚き当惑した。こうしたことにはまだ当面したことがなく、彼らはどうしてよいかわからなかった。メランヒトンは次のように言った。「確かにこの人々には、異常な霊が働いている。しかし、それはなんの霊であるか。……一方において、われわれは、神の霊を消さないように気をつけなければならない。そして、他方においては、サタンの雷に惑わされないようにしなければならない。」3 GC 1680.7

新しい教えの結果が、まもなく明らかになってきた。人々は聖書を軽んじ、あるいはそれを全く放棄するようになった。学校は混乱に陥った。学生たちは、すべての制限を無視して、研究を放棄し、大学をやめてしまった。改革事業を復興して支配することができると考えた人々は、それを破滅の渕に沈め得ただけであった。ローマ側は自信をとりもどし、「あともう1戦交えれば、すべてはわれわれのものだ」と勝ち誇って叫んだ。4 GC 1681.1

ワルトブルクにいたルターは、事の次第を耳にし、憂慮して言った。「わたしは、サタンがこのような災いを送ってくることを常に子期していた。」5彼は、これらの偽預言者たちの本性を見抜いた。そして、真理の運動が危険にさらされているのを見た。法王や皇帝の反対も、今彼が経験しているほど大きな悩みや苦しみではなかった。改革事業の支持者と称する人々の中から、最悪の敵が現れたのであった。彼に大きな喜びと慰めを与えた真理そのものが、教会の中に争闘と混乱を起こすために、用いられていたのである。 GC 1681.2

改革の働きにおいて、ルターは神の霊によって前進させられたのであり、自分自身を越えて導かれていた。彼は、そのような立場をとろうとは意図していなかったし、またあのような急激な変化を起こそうとは考えていなかった。彼は、ただ、無限の神の手中の器に過ぎなかった。それにもかかわらず、彼は自分の働きの結果について、しばしば悩んだ。彼は、ある時次のように言った。「もしわたしの教義が、どんなに身分が低く卑しい人であっても、その1人、ただ1人でも傷つけたとわかったならば、——これは福音そのものであるから、そのようなことはあり得ないのだが——わたしはそれを取り消す。取り消さないくらいならば、10回死んだほうがよい。」6 GC 1681.3